NST便り-第41報-

26回日本病態栄養学会 年次学術集会に現地参加して

管理栄養士 町田郁子

 2023年1月13日から1月15日まで,第26回日本病態栄養学会 年次学術集会が,岐阜大学医学部附属地域医療医学センター特任教授・岐阜綜合健診センター所長 村上啓雄先生を会長に,京都国際会館およびweb上で開催されました.例年は会場に6000人ほどが参会しますが,今回は「参加者数:4,885名,セッション視聴数:15,513件(2023年1月15日現在)」と発表されました.演題数は390件でした.

 当院からは以下の内容で参加しています.

一般演題:筋肉量測定法における誤差 不正確の原因

      黒川泰任

 教育講演3:入院・各種施設における低ナトリウム血症と脱水

      指定演者:黒川泰任

 教育講演10:咽頭・喉頭機能とその評価

      座長:黒川泰任

【話題性としての感想】

 メディアで御高名な,大阪大学大学院 医学系研究科 感染制御学 /大阪大学医学部附属病院 感染制御部 /感染症総合教育研究拠点 忽那賢志(くつな さとし)教授による教育講演

COVID-19 総括 3年間を振り返る」でした.

 私たち管理栄養士にとって,なかなか勉強する機会が得られない新興感染症について,第一人者である有名な先生から直接講義を受けることができた大変貴重な経験でした. 

50分間の短時間で,人類の感染症の歴史,ウイルスの構造,変異の仕組み,m-RNAワクチンの仕組み,感染状況や感染対策の現状と今後の展望について,抱いていた疑問が一瞬で氷解するような素晴らしいご教授をいただきました.

管理栄養士の立場から最も気になる給食現場の使い捨て食器対応の件については, 「科学的には食器から感染することはほぼないため,通常食器対応で構わないが, 科学的にこうだと言ってもなかなか理解が得られないことが多いため,ゆっくり説明し,周囲の状況を見ながら少しずつ変えていくのが良いのではないか」と発言されました.

 

【新規性としての感想】

  • 耳鼻咽喉科教授による咽頭・喉頭の機能評価の講演
     総合病院勤務の管理栄養士でなければ,耳鼻咽喉科医師から実例をまじえて直接ご教授いただける機会は皆無なため,大変貴重な講義でした. 当院で主に実施されている嚥下造影検査(VF)とは異なる嚥下内視鏡検査(VE)による評価過程の動画が,よく理解できました.特に,多様な嚥下障害の実例動画による梨状陥凹の状態と喉頭蓋の動きは,学生時代の御遺体解剖実習での動かない喉頭蓋を指で掴んで確認したのみの自分にとって,その動く様子は衝撃的でした.
  • 各業者による栄養補助食品サンプル展示
     従来は,おやつ系の甘味ゼリーや塩味スープ類がほとんどだったのものが, 今回は,食事系の主菜対応商品(牛すき焼き,マグロ,鯖味味噌煮,豚肉生姜焼きの各種煮こごり,肉じゃが等)やプリン(黒蜜や胡麻あずき風味)等,摂食嚥下機能に配慮しながら1カップの少量でたんぱく質の補給もできるような高齢者向け商品が多数,新規に開発されておりました.

【重要性としての感想】

  • 昨年に引き続き,塩分管理の話題が多数取り上げられていたため,学会としても重要なテーマと位置付けていると考えられました. 
     当院の病態栄養指導医による教育講演「入院・各種施設における低ナトリウム血症と脱水」の他にも電解質異常と骨折・認知症(教育講演)」,「高齢心不全患者の栄養管理(日本心不全学会合同パネルディスカッション)」,「心不全等の食塩制限(コントラバーシー)」が企画され,1日の食事提供塩分6g未満の管理はエビデンスレベルC,また,減塩遵守できた人のほうが予後不良との報告もあり,心不全の塩分管理において,「従来の減塩食一辺倒は栄養投与という点からは必ずしも適当ではない」との結論を再確認しました

血清アルブミン値の適切な解釈についての講演    血清アルブミン値は,現在国内外で用いられている様々な栄養評価ツールの殆どに採用されている項目の1つであり,当院NSTでも栄養スクリーニング項目となっております.故にその適切な解釈は重要で,学会で検討の場があることは有意義と考えられました.

NST便り-第40報-

えいよう

 「えいよう」という言葉を知らない人はいないと思いますが,漢字ではどう書くでしょうか?

 きっと「栄養」と書くと,皆思うでしょう!

 夏目漱石の「坊ちゃん(1906年)」中程に,下宿の話が以下のように出てきます.

「....膳についた。見ると今夜も薩摩芋の煮つけだ。ここのうちは、いか銀よりも鄭寧で、親切で、しかも上品だが、惜しい事に食い物がまずい。昨日も芋、一昨日も芋で今夜も芋だ。おれは芋は大好きだと明言したには相違ないが、こう立てつづけに芋を食わされては命がつづかない。うらなり君を笑うどころか、おれ自身が遠からぬうちに、芋のうらなり先生になっちまう。清ならこんな時に、おれの好きな鮪のさし身か、蒲鉾のつけ焼を食わせるんだが、貧乏士族のけちん坊と来ちゃ仕方がない。どう考えても清といっしょでなくっちあ駄目だ。もしあの学校に長くでも居る模様なら、東京から召び寄せてやろう。天麩羅蕎麦を食っちゃならない、団子を食っちゃならない、それで下宿に居て芋ばかり食って黄色くなっていろなんて、教育者はつらいものだ。禅宗坊主だって、これよりは口に栄耀をさせているだろう。

 おれは一皿の芋を平げて、机の抽斗から生卵を二つ出して、茶碗の縁でたたき割って、ようやく凌いだ。生卵ででも営養をとらなくっちあ一週二十一時間の授業が出来るものか。」

「栄耀」と「営養」がでてきて,しかも「栄養」ではありません!

「栄耀」は「ぜいたく」,「おごり」という意味で,口に贅沢させる=おいしいもの,体の足しになるものを摂る,という意味です.

 「営養」はからだを「いとなみ,やしなう」という意味で,「さかえる」意味の「栄」を用いるのは本来意味が違うのですが,前記の,口に贅沢をさせる「栄耀」と混乱・ごちゃまぜになり,「栄養」が常用になってしまったのでしょう.

 おいしいものを食べて=口に贅沢させて=栄耀 すれば,体を営み養い,「結果的には栄えるから,まあいいか」,と高島俊男先生は書かれています(お言葉ですが・・・,週刊文春, 1996).

 

黒川泰任

NST便り-第39報-

ヒトの歯と食事内容の関係  -続編-

前回は,ヒトの歯の複数の種類について,すなわち,切歯,犬歯,小臼歯,大臼歯についてお話ししました.

今回の続編は,臼歯のうち,一番奥で「親知らず」や「智歯」とも呼ばれる第三大臼歯に注目してみました.

数と機能は前回も記しましたが,以下の通りです.

  • 第三大臼歯:1対で上下の合計4;穀物や豆類をすり潰す.

多数の論文報告にもありますように,第三大臼歯が口腔内で確認出来るは,時代と共に減少してきています.

  • 第三大臼歯の数の変化
(%) 縄文時代 古墳時代 鎌倉時代 現代
4本全てある人の割合 80 60 50 30
1~3本ある人の割合 10 20 25 35
ない人の割合 10 20 25 35

 

古墳時代は,前時代である弥生時代から始まった稲作が確立され,食生活状況が良くなったと言われています.齲歯(虫歯)もすでに弥生時代人で発生していると報告されています.

またこれ以降,調理技術の進歩により,軟らかい物を食べることが可能になったため,穀物や豆類をすり潰す臼歯の機能が徐々に不要になったことも一因と考えられています.

このように,不要な物が退化することを廃用萎縮と表現しますが,これは歯だけの現象ではありません.

NST回診時,必要量の経口摂取が困難な患者様にお会いすることがあります.困難な理由は様々ですが,腸管が働いているうちは,なるべく腸を使い,消化,吸収,免疫等の様々な働きを持つ腸の機能をできるだけ維持していくことが望ましいと考えます.

 

 

 

 

‘‘If the gut works, use it(腸が使えるなら,腸を使え)”という臨床的格言もあります.

引用文献

  • 山田博之ら.日本人第3大臼歯欠如頻度の時代変化.Anthropol Sci (JPN) 112: 75–84, 2004
  • Livingston A,et al. If the gut works use it. Nurs Manage 31: 39-42, 2000
  • 金澤英作ら.江戸時代人の第三大臼歯の欠如率.Anthropol Sci (JPN) 126: 5–13, 2018

 

管理栄養士 町田 郁子

NST便り-第38報-

3回日本病態栄養学会 北海道地方会

 

過日2022年10月22日,市立札幌病院2階講堂において,第3回日本病態栄養学会 北海道地方会が開催され,当院NSTからも会への参加と4演題(以下)を発表いたしました.

 また,特別講演に日本病態栄養学会 清野 裕 理事長が来道され,直接講演を拝聴出来ました.

 

 

「減塩」「低ナトリウム(Na)血症」「体液貯留」

                     黒川泰任

サルコペニアを判定するための筋肉量簡易推定法の提案

                     板倉由紀

COVID-19入院患者に対する低栄養への認識とリハビリテーションの重要性

                     小松結愛

脊髄小脳変性症と誤診されていた,アルコール依存症・食餌性周期性四肢麻痺の一例

                     鈴木健介

 

NST便り-第37報-

80GO(はちまるごー)運動』

 盛夏の候,江別は相変わらず強い風が吹いていますが,皆さまいかがお過ごしでしょうか.

 今年は団塊世代の約267万人が75歳になる年です(ちなみに2021年の出生人数は約81万人です).

 日本では健康に力を入れた政策がたくさん出てきています.

80GO(はちまるごー)運動』を知っていますか?

 80歳の時も歩いて外出しようという寝たきり予防のスローガンです.

 2022年4月に日本医学会連合が80の学会・団体と宣言しました.内容はフレイル*1とロコモティブシンドローム*2克服のための医学会宣言となっています.

 身近にできる運動として,散歩はいかがでしょうか.買い物へ行き,歩く時間を増やすのもとてもいい方法です.

 家で座りっぱなしの時間を少なくすることで『80GO運動』になります.

 

身近なことから少しずつ.病気を寄せ付けない身体を作るために,歩く時間を増やしてみるのはいかがでしょうか!

 

厚生労働省が推奨する歩行の目安

 

女性:6000歩/日

男性:7000歩/日

 

理学療法士 野陳佳織

 

*1)加齢に伴い体力が低下した状態のこと.

*2)筋肉や関節の機能低下のために移動能力が低下した状態のこと.

 

参考文献:一般社団法人 日本医学会連合会(JMSF)HP

引用文献:厚生労働省 高齢者健康日本21

NST便り-第36報-

骨粗鬆症

皆様も聞いたことがあると思いますが,「骨粗鬆症」という病気をご存じでしょうか.簡単に言うと,骨がもろくなり骨折しやすい状態をいいます.特に女性は生まれつき骨格が小さくて筋力も弱く,妊娠や授乳などカルシウムを多く失う機会があります.さらに閉経期になると,卵巣からでる女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量が減少します.エストロゲンは骨の吸収を抑制する作用があるため,欠乏することにより骨がスカスカになります.

骨粗鬆症になることで転倒などにより腰や大腿骨の骨折をしやすくなります。骨折すると長期臥床や筋力低下によりADLが悪化し寝たきりになってしまう方もいます。そのため、骨粗鬆症の予防が大事になってくるといえるでしょう.

骨粗鬆症の予防には①カルシウムの摂取,②ビタミンDの体内合成,③骨に刺激の加わる運動,が推奨されています.

①については,カルシウムを多く含んでいる小松菜などの緑黄色野菜,ひじきなどの海藻類,豆腐などの大豆製品がおすすめです.しかし,ただ摂ればよいというわけではなく,それ以外にも主食・主菜・副食とバランスの取れた食事をとることも大切です.また,牛乳・乳製品はカルシウムの供給源として吸収率が良いといわれています.

②のビタミンDは骨の石灰化を促進し骨密度を増加させる働きを持っています.食事で摂取するものと皮膚が紫外線を浴びて合成されるものがあります.食品としてはキノコや魚類など含まれているものが限られます.摂取が難しい場合はサプリで補うことも可能ですが,過剰摂取による高カルシウム血症や高カルシウム尿症などの弊害もあるため,摂取には注意が必要です.

③については,は物理的な刺激が加わることで微量な電流が骨に伝わり強度が増すといわれています.ウォーキングやジョギングのような重力のかかる運動が効果的だと考えられています.また,筋力トレーニングによっても骨に刺激が伝わるため,重りを持ち上げるなど筋肉が強く収縮する運動が効果的といわれています.仕事や家事で忙しく,運動する機会は減少しがちですが,1日5~10分テレビをみながらでも簡単な運動を日常に取り入れてみることをお勧めします.

 いずれも,やりすぎや摂りすぎはかえって体に悪いこともあります.自分のペースで運動をしたり,自分にあった食事やサプリの摂取をしていくようにしてください.

 

看護師 松崎美咲

NST便り-第35報-

プロテイン

 

「プロテイン」,英語表記では「protein」.三大栄養素の一つであるタンパク質のことを指しますが,日本では多くの場合,タンパク質を効率よく摂取できるサプリメント的なものを指すことが多いと思います.

 

タンパク質の1日摂取基準量は一般男性65 g,一般女性50 gで,通常の食事により充分摂取可能です.しかし,内容にもよりますが運動をしている人の場合は,その1.2~2倍量が必要となります.

タンパク質が不足すると,筋肉量の減少,肌や髪のトラブル,集中力・思考力の低下が起こると考えられており,せっかく運動しても筋肉量の増加が期待できないということも考えられます.

 

そんなタンパク質の不足を補うこができるプロテインですが,ホエイプロテイン,ソイプロテイン,カゼインプロテインと3種類が存在しますので,それぞれの特徴を簡単に説明いたします.

ホエイプロテイン 

①吸収が早い(1時間程度)ので運動後の摂取が効果,

②BCAAも多く含まれており筋肉量を増やしたい人向,

③他のプロテインより値段が高い.

ソイプロテイン 

①吸収が遅い(5時間程度)ので起床後や就寝前の摂取が効果的,

②満腹感が長続きしますので,ダイエット向き,

③過剰摂取によりホルモンバランスが崩れるので注意が必要.

カゼインプロテイン 

①吸収が遅い(7時間程度)ので起床後や就寝前の摂取が効果的,

②筋肉の分解を防ぐ効果があり,筋肉を落とさずにダイエットしたい人向き,

③水に溶けにくく飲みづらい.

最後に注意点としては,過剰摂取により肝臓や腎臓に負担がかかることや,脂肪の蓄積につながることなどが考えられますので,用量を守りながら摂取するようにいたしましょう.

 

薬剤師 中陳貴史

NST便り-第34報-

漫画から学ぶ「食文化」

こんにちは.管理栄養士の津川です.

私は最近「ゴールデンカムイ」という漫画を読みました.

明治時代末期の北海道で,元陸軍兵の男性とアイヌ民族の少女が冒険するお話です.累計部数が1900万部と大人気の漫画で,読んだことがある方もいらっしゃるでしょう.

作中では,狩猟で獲った野生動物をその場で料理する場面が多く,

・動物や魚を,内蔵や骨もまるごと刃物でたたいて挽肉にする「チタタプ」

・具でもある肉や魚で出汁を取り,野菜を加えて塩で味付けした汁物の「オハウ」

・脳や目玉に塩をかけて食べる, など.

 今は想像のつきにくい料理が次々と登場します!

また,行者にんにく(プクサ),ニリンソウ(プクサキナ)など,現在でも見かける山菜や花なども出てきます。

 この他にも,「この動物や植物をこのように調理していたのか!」「どんな味なんだろう」と,思いをめぐらす料理も出てきます.

 現代の食事に近いようで遠いような食文化が,読んでいて面白かったです.

食事関係ではアイヌ語由来の名前は少ないのですが、北海道の地名や山の名前はアイヌ語を語源としたものが多いと言われています(〇〇ヌプリ:ヌプリ;山,知床:シリ・エトク;地面の・出っ張った先端).

身近に隠れている言葉を探してみるのも,意外とおもしろいかもしれませんね.

今回は食事について触れましたが,この他にもこの漫画では,時代背景,アイヌ民族の生活様式・信仰などが詳しく,わかりやすく描かれています.

お時間のある時に是非一度手に取ってみてはいかがでしょうか.

 

管理栄養士 津川由紀

NST便り-第33報-

みなさんこんにちは.言語聴覚士の小松です.

今回は“咀嚼”についてお話しいたします.

“咀嚼”とは食物を歯で噛み,粉砕することを言います.

みなさんは食事の際,よく噛んで食べていますか?現代人は「噛む力が弱くなった」「噛まなくなった」と言われています.1回の食事での噛む回数を比べてみると,弥生時代は約4000回,現代は約600回と大幅に減っているのです.これは,昔に比べると柔らかい食べ物が増え,食生活が変化したことが影響していると言われています.確かに,街中でも「とろける〇〇」「生△△」「ふわふわ」など柔らかくて美味しそうな食べ物が溢れています.

しかし噛む回数が減った現代人は,医療が発達したことにより「長生きはできるが不健康な人も数多くいる」という状況になっているそうです.

そこで今回はより健康で過ごせるよう,噛むことによる効果を紹介します.

①肥満防止:ゆっくりよく噛むことで食べ過ぎを防ぎ,肥満防止につながります.

②味覚の発達:食べ物の形や固さを感じることができ,味がよくわかるようになるなど,味覚が発達します.

③言葉の発達:口周りの筋肉をよく使うことで,顎の発達を助け,表情が豊かになったり,言葉の発音がきれいになります.

④脳の発達:脳血流が増えるので,子供は脳が発達し,大人は物忘れを予防することができます.

⑤歯の病気予防:よく噛むことで唾液がたくさん出ます.唾液には食べかすや細菌を洗い流す作用もあり,虫歯や歯肉炎の予防につながります.

⑥がんの予防:唾液に含まれるペルオキシダーゼという酵素が,食品の発がん性を抑えるので,がんの予防につながります.

⑦胃腸快調:消化を助け,食べ過ぎを防ぎます.また胃腸の働きを活発にします.

⑧全力投球:身体が活発になり,力いっぱい仕事や遊びに集中できます.

この8つの効果の頭文字を取って日本咀嚼学会では「ひみこの歯がいーぜ」という標語も作られています.

是非みなさんも,よく噛んで元気に過ごしましょう!

NST便り-第32報-

ヒトの歯と食事内容の関係

 先ず,ヒトの歯の種類,数(合計28~32),機能を確認してみますと,以下の通りです.

・切歯 2対で上下の合計 :8                 ;野菜や果物等を嚙み切る.

・犬歯 1対で上下の合計 :4                 ;魚や肉を噛みちぎる.

・臼歯 4~5対で上下の合計 :16~20         ;穀物や豆類をすり潰す.

 

 次に,ヒトの歯の数の総数に対する比率と機能に合わせた食事内容を,考えてみます.

・切歯 8本で総数に対する比率 :25                野菜や果物

・犬歯 4本で総数に対する比率 :12.5             魚や肉類

・臼歯 16~20本で総数に対する比率 :62.5             ;穀類や豆類

 

 ここで,厚生労働省が定めている食事摂取基準による総エネルギー量に対する必要量(私たち管理栄養士は,この基準に基づいて集団給食の献立を作成します.)と比較してみます.

・切歯 25 ;野菜や果物.

・犬歯 12.5 魚や肉類        ;食事摂取基準による必要たんぱく質量1320

・臼歯 62.5 穀類や豆類  ;食事摂取基準による必要炭水化物量5065

 

 以上から、歯の比率食事摂取基準とを比較すると,ほぼ一致していることがわかります.

 

 申し添えますが,食事摂取基準の算定根拠は,歯数の総数に対する比率には言及しておらず,あくまでも,各栄養素の摂取不足を回避するとともに,生活習慣病の発症予防および重症化予防を目的とするものです.

 

 偶然の一致なのかもしれませんが,人間の体は合理的にできていると,感心した一例を紹介いたしました.

 

管理栄養士  町田郁子