NST便り-第48報-

NST`実施および加算のための資格研修に,岩見沢市立栗沢病院より,2023年7月25,26日,8月15,16日の4日間,3名の方が当院で研修されました.

 大変お疲れ様でした.

 研修の感想をいただきました.

NST研修を終えて

岩見沢市立栗沢病院 看護師 小林亜希子と申します.

 この度,当院で新たに立ち上げるNSTのメンバーと,7月25日,26日,8月15日,16日の計4日間,研修に参加させていただきました.

 NSTについては浅い知識しかありませんでしたので,実際に活動を見学,体験させていただいたことは,大変有意義な経験となりました.

 様々な職種が専門の視点から意見交換することにより,患者様の全体像の把握と必要な栄養,援助を見出すことができ,それが全身状態の改善に寄与することになると実感しました.また実際に患者様に触れて対話をすることも,より個別性を重視した栄養管理につながるのだと分かりました.

 先生方の講義では,知識の学び直しをし,栄養状態の評価方法やDXAなど新しい知識にも触れ,良い刺激となりました.

 NSTの意義について学べた貴重な4日間でした.今後,NSTのメンバーとして今回学ばせていただいたことをしっかりと活かしていきたいと思います.

 ご指導いただきました黒川先生,津川先生,髙橋先生,中陣先生,NSTの皆様,NST回診・ST訓練で見学させていただきました患者様,スタッフの皆様に心より感謝申し上げます.

NST研修を終えて

岩見沢市立栗沢病院 看護師 鎌田美和と申します.

 7月25日・26日,8月15日・16日の合計4日間,江別谷藤病院のNST研修に参加させていただきました.

 黒川先生をはじめ,管理栄養士の津川さん,薬剤師の中陣さん,摂食嚥下障害認定看護師の髙橋さんの講義は,とても勉強になりました.特に黒川先生の講義は,たくさんの質問を投げかけて頂いたのに答えられず申し訳ありませんでした.何もわからない私を最期まで見捨てずにご指導いただけたことを心から感謝しています。NST回診では,チームの皆様が情報を共有し連携して患者様に必要なことを提案していく過程を学ばせていただきました.患者様にも実際に触れて上腕周囲長と皮下脂肪厚の計測,皮膚の乾燥や浮腫の触診を体験させていただきました.DXAを体験させていただき貴重な経験をすることが出来ました.

 この度の研修で学ばせていただいたことを活かして,栗沢病院のNSTチームの一員として頑張っていきたいと思います.

岩見沢市立栗沢病院 薬剤科 薬剤師 北河と申します.

 2023年7月25,26日,8月15,16日の4日間,江別谷藤病院でのNST研修に参加させていただきました.

 ご指導下さった黒川先生からはたくさんのことを教えていただきました.患者さんの状態を知るために,実際に見て・触れて・対話して,診ることがいかに大切であるか,そして疑問を持つ・頭を使って考えることの大切さを実感いたしました.また,患者さんの栄養状態の改善に向け,多職種の皆さんが協力し合って多方面から状況を共有し,考えられる問題点を見出し,解決に向けて提案されており,チームの重要性を感じました.

 摂食嚥下障害認定看護師の髙橋先生からは口腔ケアの重要性について,薬剤師の中陳先生からは薬剤による嚥下機能への影響について,管理栄養士の津川先生からは検討段階とのことでしたがDXAがなくても代用として簡便に四肢筋肉量の推測ができる計算式のお話をして下さいました.また,DXAでの測定や,嚥下訓練の見学もさせていただき,とても学びの多いものとなりました.

 回診時には患者さんの手足に直接触れて皮膚や浮腫等の体の状態の確認や,上腕周囲長や皮下脂肪厚を測らせていただきました.日常業務では患者さんに触れることはなかったので,緊張もしましたが,貴重な機会をいただきました.快く研修に協力してくださった患者さまに感謝申し上げます.

 今後,当院でNSTを立ち上げ・始動した際には,研修で学んだことを活かしてチームの一員として患者さんの役に立てるよう頑張ってまいりたいと思います.

 指導医の黒川先生,管理栄養士の津川先生,NSTチームの皆様,今回の研修に関わってくださった皆様,お忙しい中,濃密で貴重な学びの場を本当にありがとうございました.心から感謝申し上げます.

NST便り-第47報-

二次性骨折予防における多職種連携

2022年度の診療報酬改定において,継続的な二次性骨折予防に係る評価として,「二次性骨折予防継続管理料」が新設されました.

これは大腿骨近位部骨折患者に対して,関係学会のガイドラインに沿って継続的に骨粗鬆症の評価を行い,必要な治療などを実施した場合に算定できるものであり,急性期病院,回復期病院,そして診療所が連携しながら骨粗鬆症治療の評価・継続を行っていくことが求められています.そのためには多方面からの集学的アプローチが不可欠であり,医師のみならず看護師,薬剤師,理学療法士,管理栄養士などが連携する「骨折リエゾンサービス(FLS)*」の実施がカギになります.

 

 当院でも2022年7月よりFLSチームを中心に新たなシステムを構築しました.

放射線科ではDXA装置での骨密度測定,リハビリテーション部門では転倒リスク評価,サルコペニア評価など,骨折や転倒のリスクを評価します.治療が必要な例には,骨粗鬆症治療を開始し,運動指導,転倒予防,患者教育をコーデイネートしていきます.退院後の医療連携もチームで行っていくのです.

また,高齢者の脆弱性骨折患者の多くは低栄養状態です.しかし,骨粗鬆症や脆弱性骨折は入院中の栄養指導の診療報酬加算の対象になっていません.もちろん,栄養指導が算定できる何らかの疾患を合併している場合も多いが,そういった既存症がなくても栄養指導が算定できることが本来は望ましいと考えます.

私は,このようにボランティア的に行うのではなく「NST栄養サポートチーム」との多チーム連携を行うことで問題も解消されると思われ,今後の重要な方向性を示していると考えています.

町田 実

 

*骨折リエゾンサービス(Fracture Liaison Service: FLS

リエゾンとは「連続,連系」と訳されるフランス語であり,医師および多職種のメディカルスタッフが相互に連携しながら実施する骨粗鬆症の予防と改善および骨折予防の取り組みである.

 

文献

日本医師会雑誌第151巻・第11号 大腿骨近位部骨折患者における二次性骨折予防の実際

○大腿骨近位部骨折二次性骨折予防の現状 

東京大学大学院医学系研究科整形外科学     田中 栄

○大腿骨近位部骨折患者の二次性骨折予防の重要性 

鳥取大学医学部保健学科                            萩野 浩

○脆弱性骨折治療のケアギャップ

医療法人社団愛友会 伊奈病院                 石橋 英明

NST便り-第46報-

NST研修

 

2023年6月に岩見沢市立栗沢病院から2名の方がNSTの実地研修にこられました.

実習の内容や感想などをいただきました.

今後も自院でご活躍下さい.

 

 今後のやる気につながったNST研修

 

岩見沢市立栗沢病院 看護師長の髙柳と申します.

今回,2023年6月20日と21日,2023年6月27日と28日の4日間研修をさせていただきました.

 岩見沢市立栗沢病院では,今年度以下の①~③に力を入れて取り組んでいます.

  • NSTの立ち上げに向けた取り組み

(立ち上げに向け,管理栄養士1名,薬剤師1名,看護師3名が研修参加)

  • 摂食嚥下に関する取り組み

(嚥下造影や嚥下内視鏡で嚥下機能を評価し,個別性に応じたプランを立案して摂食嚥下訓練を実施している)

  • 口腔内の状態把握とケアの充実

(近隣歯科と協力体制を取り,歯科治療や口腔内のケアに関する指導をしていただいている)

 「新たな取り組みとして立ち上げるNSTに向け,率先して活動したい」,また,栄養管理について学習し,患者の栄養状態を維持あるいは改善するように「チームでどのように活動しているのかを学びたい」と思い,研修に参加しました.

 栄養状態の評価は,様々なデータや患者様の身体状況・使用薬剤の把握など,患者様の全体像を捉え,様々なコメディカルスタッフ間でカンファレンスすることで,患者様に必要な援助を見つけ出すことができると実感しました.今後の活動に向けて,栄養について学習していきたいと思います.

黒川先生をはじめ,4日間担当して下さった管理栄養士の津川様,口腔ケアについて講義をしてくださった外部講師の高橋様,薬剤と栄養の関係について講義をしていただいた薬剤師の中陳様,回診や摂食訓練で見学させていただいた患者様,症例発表会に出席して下さった皆様に深く感謝いたします.黒川先生の質問には,学習不足で答えられないことばかりでしたが,楽しい時間を過ごすことができました.

ありがとうございました.

 

NST研修を終えて

 

岩見沢市立栗沢病院 管理栄養士の松山知恵美と申します.

 栗沢病院では2023年4月より,新院長が就任いたしました.新しい取り組みの一つであるNST活動の導入を目指し,江別谷藤病院様で行われているNST研修会に参加させて頂きました.

研修期間は4日間でしたが,とても充実した研修会でした.

黒川先生,素敵なご講義を頂きありがとうございました.

栄養とは何か,NSTとはどのような活動であり,どのように取り組むべきなのかなど,たくさんのことを教えて頂きました.

患者様の栄養状態から考えられる病状を読みとり,表情や身体動作の違和感,口腔内や皮膚の状態など,患者様をあらゆる角度からしっかり診ることが大切であること.また,患者様にとって最適な栄養療法とは何なのか,多職種で知恵を絞り,発言し合いながら検討し実施していくことが重要であることなど,多くのことを学ばせて頂きました.

NST回診では,患者様の触診中もコミュニケーションを取り,患者様はとても笑顔でご自身のことを話され,それと同時にNSTメンバーが最適な栄養療法の方針を検討されていらっしゃいました.患者様にあまり不安を与えずに,身体状態はしっかりと診察されていることに,とても感銘を受けました.

栗沢病院のNST活動が開始した時には,今回学ばせて頂いたことをしっかりと活かし,【栗沢病院 栄養お助け隊】の一員として,栄養部門の最適な栄養療法が提案できるよう努力していきたいと思っております.

ご指導頂きました黒川先生,管理栄養士の津川先生,薬剤師の中陳先生,また,医療スタッフの皆様,回診させて頂いた患者様,貴重なお時間を頂き誠にありがとうございました.感謝の気持ちでいっぱいです.

 

NST便り-第45報-

NST構成委員としての臨床研修

 当院は日本病態栄養学会「栄養管理・NST実施施設」および「栄養管理・指導実施施設」 認定規約に基づいて,日本病態栄養学会よりNST研修施設の認定を受けています.

 前回に引き続き,さらに2名の方が無事研修を終了されました.お疲れ様でした.自院で栄養,経口摂取,嚥下などの分野で益々ご活躍下さい.

 

研修に対する感想などをいただきました.

                                         黒川泰任

 

NST研修を終えて

 

札幌市の啓生会病院 管理栄養士 井田順子と申します.

7月4日・5日と11・12日の4日間 江別谷藤病院のNST研修に参加させて頂きました.

NSTのスタッフが自然に連携して患者様に医療を提供し,その中でお互いの知識を高めている姿を見せて頂きました.黒川先生はじめ栄養士・薬剤師・摂食嚥下障害認定看護師の方々のすぐに役立てる内容の講義を聞く機会を得ました.また,MRIやDXA等の医療機器も詳しく見せて頂き,通常ではできない体験をすることが出来ました.黒川先生には視野を広げて頂いたと感謝しております.この数日間で本当に多くの事を学ばせて頂きました.今回の貴重な経験を日々の業務に活かして参りたいと思います.

ご指導頂きました黒川先生,栄養サポートチームの皆様,事務長様,NST回診で勉強させてくださった患者様,今回の研修でお世話になった江別谷藤病院の皆様に感謝申し上げます.

 

 

啓生会病院 薬剤師 横田裕子と申します.

この度は貴院にてNST研修をさせていただきありがとうございました.

黒川先生の盛りだくさんの講義をはじめ,中陳先生や津川さんの講義は大変勉強になると同時に良い刺激になりました.

 口腔ケアの講義では,実際の患者様の口腔内の様子をオブラートRを使って体験させていただき,口腔ケアの大切さを実感いたしました.何より回診では患者様が笑顔で快く研修に協力してくださったことはとても有難く,大変貴重な経験となりました.患者様を自分の目で診ること,そしてコミュニケーションを図ることで様々な気づきや疑問が生まれます.

多職種連携で病態を探り情報交換を行うことで早期回復に努めていくというチームの重要性を切に感じる4日間でした.学ばせていただいたことを当院での活動に役立てられるよう邁進してまいります.

今回の研修に際しましては,お忙しい中,黒川先生やスタッフの皆様にご尽力いただけたこと心から感謝しております.

お礼文にて失礼いたします.

         

2023年7月14日 

啓生会病院薬剤師 横田裕子

 

NST便り-第44報-

し ん た ま

 

桜も終わり,どんどんと過ごしやすい季節になってきましたね.

私はこの間,スーパーで”新玉ねぎ”を見つけて春を感じました.

ところで皆さん,新玉ねぎはなぜ”新”と付くのかご存知でしょうか.

新玉ねぎは,温暖な地域で3~4月頃に出荷される早取りの玉ねぎの総称で,「黄玉ねぎ」や「白玉ねぎ」を,収穫後すぐに出荷させたものを言います.

通常,玉ねぎは,一か月ほど乾燥させて出荷されますが,新玉ねぎは,乾燥させずにすぐ出荷されることから,みずみずしくて肉質が柔らかく,普通の玉ねぎよりも辛味が少なく感じられます.それらを区別するために付けられたのだそうです.

また,玉ねぎには辛味の元になる硫化アリルも豊富に含まれています.硫化アリルには,消化液の分泌を促進して新陳代謝を盛んにし,血液をサラサラにする働きがあると言われています.

硫化アリルは水溶性で熱に弱いので,新玉ねぎを生で食べることで,硫化アリルを効率良く摂ることができるそうです.

皆さんも是非旬な野菜で,美味しく健康にお過ごしください.

言語聴覚士 小松結愛

 

 

引用文献:農林水産省HP

 

 

 

 

NST便り-第43報-

ビタミンと尿検査

ビタミンを健康や美容のためにサプリメント,食品などから積極的にとられている方も多いと思われます.

ビタミンには脂溶性ビタミン(ビタミンD,A,K,E)と水溶性ビタミン(ビタミンC,Bなど)があります.脂溶性ビタミンは油に溶けやすく,摂りすぎると副作用をおこすため過剰摂取には注意が必要です.水溶性ビタミンは水に溶けやすく,摂りすぎた分はそのまま尿中に排泄されます. 

サプリメントや栄養ドリンクを飲んだあとの尿は通常より色が濃くなることがあります.これはビタミンB₂の影響で尿が蛍光イエローに着色されるためです.

また,ビタミンCは尿検査に影響を与え,潜血や尿糖などの項目が陰性化することがあります.

通常の果物や野菜の摂取では影響はありませんが,サプリメント摂取時は高濃度のビタミンが排泄されるため,健康診断などの尿検査の際には数日前から一時服用をお休み下さい.

臨床検査技師 山本 みお

NST便り-第42報-

NST構成委員としての臨床研修

 当院は日本病態栄養学会「栄養管理・NST実施施設」および「栄養管理・指導実施施設」 認定規約に基づいて,日本病態栄養学会よりNST研修施設の認定を受けています.

 このたび2名の方が遠方からでしたが,無事研修を終了され,研修に対する感想などをいただきました.

お疲れ様でした.自院でも益々,栄養,経口摂取,嚥下などの分野でご活躍下さい.

 

                     黒川泰任

 

寄稿

NST研修を終えて

苫小牧市立病院管理栄養士の澁谷と申します.

 私は,病棟栄養士として患者様の栄養管理に携わるほか,昨年よりNST活動の中の嚥下チームの一員として,嚥下障害のある患者様への嚥下評価や栄養提案を行い,栄養サポートを行っています.

 この度の研修に参加させていただき,黒川先生には患者さんの病状,栄養状態を知るためには,まず患者様を診ることが大切であると教えてくださいました.診て,判断するためには当然知識が必要であり,小さなことでも疑問を持つ姿勢も大切です.またNST活動や口腔ケア,薬剤についてなど,多くのことを学ばせていただきました.今回の研修での学びを活かし,患者さんに「栄養士がいるから安心だね」と思っていただけるような栄養サポートができるよう,これからも精進してまいりたいと思います.

 ご指導いただきました黒川先生をはじめ,医療スタッフの皆様,ご協力していただきました患者様に感謝申し上げます.

こんにちは.苫小牧市立病院薬剤師 横山と申します.

 2022年8月30日と31日,2023年4月11日と12日の4日間,江別谷藤病院で栄養や病気について詳しく勉強するために,NST研修会に参加させて頂きました.医師である黒川先生をはじめ,様々な医療スタッフの方から講義を受けることができ,とても有意義な時間を過ごすことが出来ました.また,回診では他(多)職種の方々が協力し合い,患者様に,より良い医療を提供するために切磋琢磨している姿を見ることが出来ました.

 今回の貴重な経験を活かし,今後も薬剤師業務に取り組んでいきたいと思います.この研修を実現させてくださいました江別谷藤病院の皆様,黒川先生,外部講師の先生,回診でまわらせて頂いた患者様,すべての方々に感謝を申し上げます.本当にありがとうございました.

 また最後に余談ではありますが,皆様は苫小牧市がどこにあるかご存じでしょうか.苫小牧市は北海道胆振群の海岸沿いにある市です.北寄貝やハスカップが特産で,ホッキカレーや銘菓『よいとまけ』が有名です.江別西ICから苫小牧方面へ道央自動車道を走っていくと1時間ちょっとで到着する距離なので,ぜひ苫小牧に遊びにきて頂けると嬉しいです.

 

NST便り-第41報-

26回日本病態栄養学会 年次学術集会に現地参加して

管理栄養士 町田郁子

 2023年1月13日から1月15日まで,第26回日本病態栄養学会 年次学術集会が,岐阜大学医学部附属地域医療医学センター特任教授・岐阜綜合健診センター所長 村上啓雄先生を会長に,京都国際会館およびweb上で開催されました.例年は会場に6000人ほどが参会しますが,今回は「参加者数:4,885名,セッション視聴数:15,513件(2023年1月15日現在)」と発表されました.演題数は390件でした.

 当院からは以下の内容で参加しています.

一般演題:筋肉量測定法における誤差 不正確の原因

      黒川泰任

 教育講演3:入院・各種施設における低ナトリウム血症と脱水

      指定演者:黒川泰任

 教育講演10:咽頭・喉頭機能とその評価

      座長:黒川泰任

【話題性としての感想】

 メディアで御高名な,大阪大学大学院 医学系研究科 感染制御学 /大阪大学医学部附属病院 感染制御部 /感染症総合教育研究拠点 忽那賢志(くつな さとし)教授による教育講演

COVID-19 総括 3年間を振り返る」でした.

 私たち管理栄養士にとって,なかなか勉強する機会が得られない新興感染症について,第一人者である有名な先生から直接講義を受けることができた大変貴重な経験でした. 

50分間の短時間で,人類の感染症の歴史,ウイルスの構造,変異の仕組み,m-RNAワクチンの仕組み,感染状況や感染対策の現状と今後の展望について,抱いていた疑問が一瞬で氷解するような素晴らしいご教授をいただきました.

管理栄養士の立場から最も気になる給食現場の使い捨て食器対応の件については, 「科学的には食器から感染することはほぼないため,通常食器対応で構わないが, 科学的にこうだと言ってもなかなか理解が得られないことが多いため,ゆっくり説明し,周囲の状況を見ながら少しずつ変えていくのが良いのではないか」と発言されました.

 

【新規性としての感想】

  • 耳鼻咽喉科教授による咽頭・喉頭の機能評価の講演
     総合病院勤務の管理栄養士でなければ,耳鼻咽喉科医師から実例をまじえて直接ご教授いただける機会は皆無なため,大変貴重な講義でした. 当院で主に実施されている嚥下造影検査(VF)とは異なる嚥下内視鏡検査(VE)による評価過程の動画が,よく理解できました.特に,多様な嚥下障害の実例動画による梨状陥凹の状態と喉頭蓋の動きは,学生時代の御遺体解剖実習での動かない喉頭蓋を指で掴んで確認したのみの自分にとって,その動く様子は衝撃的でした.
  • 各業者による栄養補助食品サンプル展示
     従来は,おやつ系の甘味ゼリーや塩味スープ類がほとんどだったのものが, 今回は,食事系の主菜対応商品(牛すき焼き,マグロ,鯖味味噌煮,豚肉生姜焼きの各種煮こごり,肉じゃが等)やプリン(黒蜜や胡麻あずき風味)等,摂食嚥下機能に配慮しながら1カップの少量でたんぱく質の補給もできるような高齢者向け商品が多数,新規に開発されておりました.

【重要性としての感想】

  • 昨年に引き続き,塩分管理の話題が多数取り上げられていたため,学会としても重要なテーマと位置付けていると考えられました. 
     当院の病態栄養指導医による教育講演「入院・各種施設における低ナトリウム血症と脱水」の他にも電解質異常と骨折・認知症(教育講演)」,「高齢心不全患者の栄養管理(日本心不全学会合同パネルディスカッション)」,「心不全等の食塩制限(コントラバーシー)」が企画され,1日の食事提供塩分6g未満の管理はエビデンスレベルC,また,減塩遵守できた人のほうが予後不良との報告もあり,心不全の塩分管理において,「従来の減塩食一辺倒は栄養投与という点からは必ずしも適当ではない」との結論を再確認しました

血清アルブミン値の適切な解釈についての講演    血清アルブミン値は,現在国内外で用いられている様々な栄養評価ツールの殆どに採用されている項目の1つであり,当院NSTでも栄養スクリーニング項目となっております.故にその適切な解釈は重要で,学会で検討の場があることは有意義と考えられました.

NST便り-第40報-

えいよう

 「えいよう」という言葉を知らない人はいないと思いますが,漢字ではどう書くでしょうか?

 きっと「栄養」と書くと,皆思うでしょう!

 夏目漱石の「坊ちゃん(1906年)」中程に,下宿の話が以下のように出てきます.

「....膳についた。見ると今夜も薩摩芋の煮つけだ。ここのうちは、いか銀よりも鄭寧で、親切で、しかも上品だが、惜しい事に食い物がまずい。昨日も芋、一昨日も芋で今夜も芋だ。おれは芋は大好きだと明言したには相違ないが、こう立てつづけに芋を食わされては命がつづかない。うらなり君を笑うどころか、おれ自身が遠からぬうちに、芋のうらなり先生になっちまう。清ならこんな時に、おれの好きな鮪のさし身か、蒲鉾のつけ焼を食わせるんだが、貧乏士族のけちん坊と来ちゃ仕方がない。どう考えても清といっしょでなくっちあ駄目だ。もしあの学校に長くでも居る模様なら、東京から召び寄せてやろう。天麩羅蕎麦を食っちゃならない、団子を食っちゃならない、それで下宿に居て芋ばかり食って黄色くなっていろなんて、教育者はつらいものだ。禅宗坊主だって、これよりは口に栄耀をさせているだろう。

 おれは一皿の芋を平げて、机の抽斗から生卵を二つ出して、茶碗の縁でたたき割って、ようやく凌いだ。生卵ででも営養をとらなくっちあ一週二十一時間の授業が出来るものか。」

「栄耀」と「営養」がでてきて,しかも「栄養」ではありません!

「栄耀」は「ぜいたく」,「おごり」という意味で,口に贅沢させる=おいしいもの,体の足しになるものを摂る,という意味です.

 「営養」はからだを「いとなみ,やしなう」という意味で,「さかえる」意味の「栄」を用いるのは本来意味が違うのですが,前記の,口に贅沢をさせる「栄耀」と混乱・ごちゃまぜになり,「栄養」が常用になってしまったのでしょう.

 おいしいものを食べて=口に贅沢させて=栄耀 すれば,体を営み養い,「結果的には栄えるから,まあいいか」,と高島俊男先生は書かれています(お言葉ですが・・・,週刊文春, 1996).

 

黒川泰任

NST便り-第39報-

ヒトの歯と食事内容の関係  -続編-

前回は,ヒトの歯の複数の種類について,すなわち,切歯,犬歯,小臼歯,大臼歯についてお話ししました.

今回の続編は,臼歯のうち,一番奥で「親知らず」や「智歯」とも呼ばれる第三大臼歯に注目してみました.

数と機能は前回も記しましたが,以下の通りです.

  • 第三大臼歯:1対で上下の合計4;穀物や豆類をすり潰す.

多数の論文報告にもありますように,第三大臼歯が口腔内で確認出来るは,時代と共に減少してきています.

  • 第三大臼歯の数の変化
(%) 縄文時代 古墳時代 鎌倉時代 現代
4本全てある人の割合 80 60 50 30
1~3本ある人の割合 10 20 25 35
ない人の割合 10 20 25 35

 

古墳時代は,前時代である弥生時代から始まった稲作が確立され,食生活状況が良くなったと言われています.齲歯(虫歯)もすでに弥生時代人で発生していると報告されています.

またこれ以降,調理技術の進歩により,軟らかい物を食べることが可能になったため,穀物や豆類をすり潰す臼歯の機能が徐々に不要になったことも一因と考えられています.

このように,不要な物が退化することを廃用萎縮と表現しますが,これは歯だけの現象ではありません.

NST回診時,必要量の経口摂取が困難な患者様にお会いすることがあります.困難な理由は様々ですが,腸管が働いているうちは,なるべく腸を使い,消化,吸収,免疫等の様々な働きを持つ腸の機能をできるだけ維持していくことが望ましいと考えます.

 

 

 

 

‘‘If the gut works, use it(腸が使えるなら,腸を使え)”という臨床的格言もあります.

引用文献

  • 山田博之ら.日本人第3大臼歯欠如頻度の時代変化.Anthropol Sci (JPN) 112: 75–84, 2004
  • Livingston A,et al. If the gut works use it. Nurs Manage 31: 39-42, 2000
  • 金澤英作ら.江戸時代人の第三大臼歯の欠如率.Anthropol Sci (JPN) 126: 5–13, 2018

 

管理栄養士 町田 郁子