NST便り-第34報-

漫画から学ぶ「食文化」

こんにちは.管理栄養士の津川です.

私は最近「ゴールデンカムイ」という漫画を読みました.

明治時代末期の北海道で,元陸軍兵の男性とアイヌ民族の少女が冒険するお話です.累計部数が1900万部と大人気の漫画で,読んだことがある方もいらっしゃるでしょう.

作中では,狩猟で獲った野生動物をその場で料理する場面が多く,

・動物や魚を,内蔵や骨もまるごと刃物でたたいて挽肉にする「チタタプ」

・具でもある肉や魚で出汁を取り,野菜を加えて塩で味付けした汁物の「オハウ」

・脳や目玉に塩をかけて食べる, など.

 今は想像のつきにくい料理が次々と登場します!

また,行者にんにく(プクサ),ニリンソウ(プクサキナ)など,現在でも見かける山菜や花なども出てきます。

 この他にも,「この動物や植物をこのように調理していたのか!」「どんな味なんだろう」と,思いをめぐらす料理も出てきます.

 現代の食事に近いようで遠いような食文化が,読んでいて面白かったです.

食事関係ではアイヌ語由来の名前は少ないのですが、北海道の地名や山の名前はアイヌ語を語源としたものが多いと言われています(〇〇ヌプリ:ヌプリ;山,知床:シリ・エトク;地面の・出っ張った先端).

身近に隠れている言葉を探してみるのも,意外とおもしろいかもしれませんね.

今回は食事について触れましたが,この他にもこの漫画では,時代背景,アイヌ民族の生活様式・信仰などが詳しく,わかりやすく描かれています.

お時間のある時に是非一度手に取ってみてはいかがでしょうか.

 

管理栄養士 津川由紀

NST便り-第33報-

みなさんこんにちは.言語聴覚士の小松です.

今回は“咀嚼”についてお話しいたします.

“咀嚼”とは食物を歯で噛み,粉砕することを言います.

みなさんは食事の際,よく噛んで食べていますか?現代人は「噛む力が弱くなった」「噛まなくなった」と言われています.1回の食事での噛む回数を比べてみると,弥生時代は約4000回,現代は約600回と大幅に減っているのです.これは,昔に比べると柔らかい食べ物が増え,食生活が変化したことが影響していると言われています.確かに,街中でも「とろける〇〇」「生△△」「ふわふわ」など柔らかくて美味しそうな食べ物が溢れています.

しかし噛む回数が減った現代人は,医療が発達したことにより「長生きはできるが不健康な人も数多くいる」という状況になっているそうです.

そこで今回はより健康で過ごせるよう,噛むことによる効果を紹介します.

①肥満防止:ゆっくりよく噛むことで食べ過ぎを防ぎ,肥満防止につながります.

②味覚の発達:食べ物の形や固さを感じることができ,味がよくわかるようになるなど,味覚が発達します.

③言葉の発達:口周りの筋肉をよく使うことで,顎の発達を助け,表情が豊かになったり,言葉の発音がきれいになります.

④脳の発達:脳血流が増えるので,子供は脳が発達し,大人は物忘れを予防することができます.

⑤歯の病気予防:よく噛むことで唾液がたくさん出ます.唾液には食べかすや細菌を洗い流す作用もあり,虫歯や歯肉炎の予防につながります.

⑥がんの予防:唾液に含まれるペルオキシダーゼという酵素が,食品の発がん性を抑えるので,がんの予防につながります.

⑦胃腸快調:消化を助け,食べ過ぎを防ぎます.また胃腸の働きを活発にします.

⑧全力投球:身体が活発になり,力いっぱい仕事や遊びに集中できます.

この8つの効果の頭文字を取って日本咀嚼学会では「ひみこの歯がいーぜ」という標語も作られています.

是非みなさんも,よく噛んで元気に過ごしましょう!

NST便り-第32報-

ヒトの歯と食事内容の関係

 先ず,ヒトの歯の種類,数(合計28~32),機能を確認してみますと,以下の通りです.

・切歯 2対で上下の合計 :8                 ;野菜や果物等を嚙み切る.

・犬歯 1対で上下の合計 :4                 ;魚や肉を噛みちぎる.

・臼歯 4~5対で上下の合計 :16~20         ;穀物や豆類をすり潰す.

 

 次に,ヒトの歯の数の総数に対する比率と機能に合わせた食事内容を,考えてみます.

・切歯 8本で総数に対する比率 :25                野菜や果物

・犬歯 4本で総数に対する比率 :12.5             魚や肉類

・臼歯 16~20本で総数に対する比率 :62.5             ;穀類や豆類

 

 ここで,厚生労働省が定めている食事摂取基準による総エネルギー量に対する必要量(私たち管理栄養士は,この基準に基づいて集団給食の献立を作成します.)と比較してみます.

・切歯 25 ;野菜や果物.

・犬歯 12.5 魚や肉類        ;食事摂取基準による必要たんぱく質量1320

・臼歯 62.5 穀類や豆類  ;食事摂取基準による必要炭水化物量5065

 

 以上から、歯の比率食事摂取基準とを比較すると,ほぼ一致していることがわかります.

 

 申し添えますが,食事摂取基準の算定根拠は,歯数の総数に対する比率には言及しておらず,あくまでも,各栄養素の摂取不足を回避するとともに,生活習慣病の発症予防および重症化予防を目的とするものです.

 

 偶然の一致なのかもしれませんが,人間の体は合理的にできていると,感心した一例を紹介いたしました.

 

管理栄養士  町田郁子