NST便り-第37報-

80GO(はちまるごー)運動』

 盛夏の候,江別は相変わらず強い風が吹いていますが,皆さまいかがお過ごしでしょうか.

 今年は団塊世代の約267万人が75歳になる年です(ちなみに2021年の出生人数は約81万人です).

 日本では健康に力を入れた政策がたくさん出てきています.

80GO(はちまるごー)運動』を知っていますか?

 80歳の時も歩いて外出しようという寝たきり予防のスローガンです.

 2022年4月に日本医学会連合が80の学会・団体と宣言しました.内容はフレイル*1とロコモティブシンドローム*2克服のための医学会宣言となっています.

 身近にできる運動として,散歩はいかがでしょうか.買い物へ行き,歩く時間を増やすのもとてもいい方法です.

 家で座りっぱなしの時間を少なくすることで『80GO運動』になります.

 

身近なことから少しずつ.病気を寄せ付けない身体を作るために,歩く時間を増やしてみるのはいかがでしょうか!

 

厚生労働省が推奨する歩行の目安

 

女性:6000歩/日

男性:7000歩/日

 

理学療法士 野陳佳織

 

*1)加齢に伴い体力が低下した状態のこと.

*2)筋肉や関節の機能低下のために移動能力が低下した状態のこと.

 

参考文献:一般社団法人 日本医学会連合会(JMSF)HP

引用文献:厚生労働省 高齢者健康日本21

NST便り-第36報-

骨粗鬆症

皆様も聞いたことがあると思いますが,「骨粗鬆症」という病気をご存じでしょうか.簡単に言うと,骨がもろくなり骨折しやすい状態をいいます.特に女性は生まれつき骨格が小さくて筋力も弱く,妊娠や授乳などカルシウムを多く失う機会があります.さらに閉経期になると,卵巣からでる女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量が減少します.エストロゲンは骨の吸収を抑制する作用があるため,欠乏することにより骨がスカスカになります.

骨粗鬆症になることで転倒などにより腰や大腿骨の骨折をしやすくなります。骨折すると長期臥床や筋力低下によりADLが悪化し寝たきりになってしまう方もいます。そのため、骨粗鬆症の予防が大事になってくるといえるでしょう.

骨粗鬆症の予防には①カルシウムの摂取,②ビタミンDの体内合成,③骨に刺激の加わる運動,が推奨されています.

①については,カルシウムを多く含んでいる小松菜などの緑黄色野菜,ひじきなどの海藻類,豆腐などの大豆製品がおすすめです.しかし,ただ摂ればよいというわけではなく,それ以外にも主食・主菜・副食とバランスの取れた食事をとることも大切です.また,牛乳・乳製品はカルシウムの供給源として吸収率が良いといわれています.

②のビタミンDは骨の石灰化を促進し骨密度を増加させる働きを持っています.食事で摂取するものと皮膚が紫外線を浴びて合成されるものがあります.食品としてはキノコや魚類など含まれているものが限られます.摂取が難しい場合はサプリで補うことも可能ですが,過剰摂取による高カルシウム血症や高カルシウム尿症などの弊害もあるため,摂取には注意が必要です.

③については,は物理的な刺激が加わることで微量な電流が骨に伝わり強度が増すといわれています.ウォーキングやジョギングのような重力のかかる運動が効果的だと考えられています.また,筋力トレーニングによっても骨に刺激が伝わるため,重りを持ち上げるなど筋肉が強く収縮する運動が効果的といわれています.仕事や家事で忙しく,運動する機会は減少しがちですが,1日5~10分テレビをみながらでも簡単な運動を日常に取り入れてみることをお勧めします.

 いずれも,やりすぎや摂りすぎはかえって体に悪いこともあります.自分のペースで運動をしたり,自分にあった食事やサプリの摂取をしていくようにしてください.

 

看護師 松崎美咲

NST便り-第35報-

プロテイン

 

「プロテイン」,英語表記では「protein」.三大栄養素の一つであるタンパク質のことを指しますが,日本では多くの場合,タンパク質を効率よく摂取できるサプリメント的なものを指すことが多いと思います.

 

タンパク質の1日摂取基準量は一般男性65 g,一般女性50 gで,通常の食事により充分摂取可能です.しかし,内容にもよりますが運動をしている人の場合は,その1.2~2倍量が必要となります.

タンパク質が不足すると,筋肉量の減少,肌や髪のトラブル,集中力・思考力の低下が起こると考えられており,せっかく運動しても筋肉量の増加が期待できないということも考えられます.

 

そんなタンパク質の不足を補うこができるプロテインですが,ホエイプロテイン,ソイプロテイン,カゼインプロテインと3種類が存在しますので,それぞれの特徴を簡単に説明いたします.

ホエイプロテイン 

①吸収が早い(1時間程度)ので運動後の摂取が効果,

②BCAAも多く含まれており筋肉量を増やしたい人向,

③他のプロテインより値段が高い.

ソイプロテイン 

①吸収が遅い(5時間程度)ので起床後や就寝前の摂取が効果的,

②満腹感が長続きしますので,ダイエット向き,

③過剰摂取によりホルモンバランスが崩れるので注意が必要.

カゼインプロテイン 

①吸収が遅い(7時間程度)ので起床後や就寝前の摂取が効果的,

②筋肉の分解を防ぐ効果があり,筋肉を落とさずにダイエットしたい人向き,

③水に溶けにくく飲みづらい.

最後に注意点としては,過剰摂取により肝臓や腎臓に負担がかかることや,脂肪の蓄積につながることなどが考えられますので,用量を守りながら摂取するようにいたしましょう.

 

薬剤師 中陳貴史

NST便り-第34報-

漫画から学ぶ「食文化」

こんにちは.管理栄養士の津川です.

私は最近「ゴールデンカムイ」という漫画を読みました.

明治時代末期の北海道で,元陸軍兵の男性とアイヌ民族の少女が冒険するお話です.累計部数が1900万部と大人気の漫画で,読んだことがある方もいらっしゃるでしょう.

作中では,狩猟で獲った野生動物をその場で料理する場面が多く,

・動物や魚を,内蔵や骨もまるごと刃物でたたいて挽肉にする「チタタプ」

・具でもある肉や魚で出汁を取り,野菜を加えて塩で味付けした汁物の「オハウ」

・脳や目玉に塩をかけて食べる, など.

 今は想像のつきにくい料理が次々と登場します!

また,行者にんにく(プクサ),ニリンソウ(プクサキナ)など,現在でも見かける山菜や花なども出てきます。

 この他にも,「この動物や植物をこのように調理していたのか!」「どんな味なんだろう」と,思いをめぐらす料理も出てきます.

 現代の食事に近いようで遠いような食文化が,読んでいて面白かったです.

食事関係ではアイヌ語由来の名前は少ないのですが、北海道の地名や山の名前はアイヌ語を語源としたものが多いと言われています(〇〇ヌプリ:ヌプリ;山,知床:シリ・エトク;地面の・出っ張った先端).

身近に隠れている言葉を探してみるのも,意外とおもしろいかもしれませんね.

今回は食事について触れましたが,この他にもこの漫画では,時代背景,アイヌ民族の生活様式・信仰などが詳しく,わかりやすく描かれています.

お時間のある時に是非一度手に取ってみてはいかがでしょうか.

 

管理栄養士 津川由紀

NST便り-第33報-

みなさんこんにちは.言語聴覚士の小松です.

今回は“咀嚼”についてお話しいたします.

“咀嚼”とは食物を歯で噛み,粉砕することを言います.

みなさんは食事の際,よく噛んで食べていますか?現代人は「噛む力が弱くなった」「噛まなくなった」と言われています.1回の食事での噛む回数を比べてみると,弥生時代は約4000回,現代は約600回と大幅に減っているのです.これは,昔に比べると柔らかい食べ物が増え,食生活が変化したことが影響していると言われています.確かに,街中でも「とろける〇〇」「生△△」「ふわふわ」など柔らかくて美味しそうな食べ物が溢れています.

しかし噛む回数が減った現代人は,医療が発達したことにより「長生きはできるが不健康な人も数多くいる」という状況になっているそうです.

そこで今回はより健康で過ごせるよう,噛むことによる効果を紹介します.

①肥満防止:ゆっくりよく噛むことで食べ過ぎを防ぎ,肥満防止につながります.

②味覚の発達:食べ物の形や固さを感じることができ,味がよくわかるようになるなど,味覚が発達します.

③言葉の発達:口周りの筋肉をよく使うことで,顎の発達を助け,表情が豊かになったり,言葉の発音がきれいになります.

④脳の発達:脳血流が増えるので,子供は脳が発達し,大人は物忘れを予防することができます.

⑤歯の病気予防:よく噛むことで唾液がたくさん出ます.唾液には食べかすや細菌を洗い流す作用もあり,虫歯や歯肉炎の予防につながります.

⑥がんの予防:唾液に含まれるペルオキシダーゼという酵素が,食品の発がん性を抑えるので,がんの予防につながります.

⑦胃腸快調:消化を助け,食べ過ぎを防ぎます.また胃腸の働きを活発にします.

⑧全力投球:身体が活発になり,力いっぱい仕事や遊びに集中できます.

この8つの効果の頭文字を取って日本咀嚼学会では「ひみこの歯がいーぜ」という標語も作られています.

是非みなさんも,よく噛んで元気に過ごしましょう!

NST便り-第32報-

ヒトの歯と食事内容の関係

 先ず,ヒトの歯の種類,数(合計28~32),機能を確認してみますと,以下の通りです.

・切歯 2対で上下の合計 :8                 ;野菜や果物等を嚙み切る.

・犬歯 1対で上下の合計 :4                 ;魚や肉を噛みちぎる.

・臼歯 4~5対で上下の合計 :16~20         ;穀物や豆類をすり潰す.

 

 次に,ヒトの歯の数の総数に対する比率と機能に合わせた食事内容を,考えてみます.

・切歯 8本で総数に対する比率 :25                野菜や果物

・犬歯 4本で総数に対する比率 :12.5             魚や肉類

・臼歯 16~20本で総数に対する比率 :62.5             ;穀類や豆類

 

 ここで,厚生労働省が定めている食事摂取基準による総エネルギー量に対する必要量(私たち管理栄養士は,この基準に基づいて集団給食の献立を作成します.)と比較してみます.

・切歯 25 ;野菜や果物.

・犬歯 12.5 魚や肉類        ;食事摂取基準による必要たんぱく質量1320

・臼歯 62.5 穀類や豆類  ;食事摂取基準による必要炭水化物量5065

 

 以上から、歯の比率食事摂取基準とを比較すると,ほぼ一致していることがわかります.

 

 申し添えますが,食事摂取基準の算定根拠は,歯数の総数に対する比率には言及しておらず,あくまでも,各栄養素の摂取不足を回避するとともに,生活習慣病の発症予防および重症化予防を目的とするものです.

 

 偶然の一致なのかもしれませんが,人間の体は合理的にできていると,感心した一例を紹介いたしました.

 

管理栄養士  町田郁子

NST便り-第31報-

日本病態栄養学会 年次学術集会

2022年1月28日から1月30日まで,第24回・第25回日本病態栄養学会 年次学術集会が2年ぶりに,新古賀病院 川﨑英二先生,盛岡市立病院長 加藤章信先生を会長に,京都国際会館およびweb上で開催されました.例年は会場に6000人ほどが参会いたしますが,今回は「参加者数:4,649名,セッション視聴数:22,352件」と発表されました.

当院からは

①一般演題:3つの口演

  • COVID-19 入院患者における低栄養への認識とリハビリテーションの重要性

      小松結愛 言語聴覚療法士

  • 脊髄小脳変性症と診断されていた,摂食異常,sarcopeniaを呈したアルコール依存症による周期性四肢麻痺の一例

      鈴木健介 看護師

  • サルコペニア(加齢による病的な筋肉減少症)を判定するための筋肉量の簡易推定法

                              板倉由紀 管理栄養士

 

②シンポジウム11高齢者における病態別栄養管理の実践と課題

  • Nutritional Management in the Elderly; Overlooked Neurological Deficits in the Average Joe

                              指定演者:黒川泰任

 

③シンポジウム18骨粗鬆症の栄養:現状と展望

  • A Lookback on Calcium Physiology applicable for Clinical Settings

                              座長および指定演者:黒川泰任

 

ICU・救急の栄養管理②

                             座長:黒川泰任

 

特別招待口演は

2018年のノーベル医学生理学賞に輝いた本庶 佑(ほんじょうたすく)京都大学 がん免疫総合研究センター センター長 特別教授の

癌免疫療法の新展開」でした.

話題としては

  • ICUの栄養特別加算 や
  • 心不全の塩分管理において,「従来の減塩食一辺倒は栄養投与という点からは必ずしも適当ではない」,などが目に付きました.

黒川泰任

 

NST便り-第30報-

「ST」NST

ご無沙汰しております.言語聴覚士の磯崎です.

たびたび記事を載せていただいていますが,今回は「言語聴覚士(以下ST)」という職業について書きます.

STは、理学療法士(以下PT),作業療法士(以下OT)と同じく,リハビリテーションの専門職で,脳卒中の後遺症で失語症,構音障害などの言語障害に対して言語訓練をしたり,近年では,日本人の死亡原因の3位(最近は「老衰」とされて5位まで下がりましたが…)となっている「嚥下障害」に対する嚥下訓練を行ったりする資格職です.

「自分が人生の最後に何を食べたいか?」と質問されたりしたことはありませんか?

このコーナーで多くの職員が書いたように,私たち日本人にとって「食べる」ことは,「生活の質」,大げさに言うと「人生の質」に大きく影響していると思います.

僕は,おいしいものを食べるだけで,とても幸せな気持ちになります.とても大切なことです.

20歳代より40歳代では食べられる量は減ります.寂しいことに,どんどん食べられなくなっていきます….80歳代,90歳代だとどうでしょう….食べることが,少し大変になってきます.

「楽しみ」が「楽しみ」ではなくなってしまう辛さ.

僕はSTをしていますので,老齢で食べられなくなっている人の評価や訓練をすることがあるし,脳卒中による嚥下障害で食べられなくなってしまった人にも評価や訓練をすることがあります.

人は食べたもので出来ていますから,この「NST」は身体的な健康を支える上でも,とても大切だと考えています.

食べられなくなって,やせ細っていく人もたくさん見てきましたし,運動を頑張っても必要なたんぱく質やアミノ酸を摂らないと筋肉はつきません.

つまり,食べることは,人生の大きな楽しみであるし,食べなければ健康も得られない必然ということです.

このNSTという組織では,僕たちSTも含めて様々な職種で多角的に皆さんの「食べる」ことを支えます.

栄養を摂って,適切な運動をする,これがわれわれ生物の理想と必然です.しかし、人は必ず食べられない時が来ます.老齢や病気によってです.そうやって死を迎えるのも生物の宿命だからです.

皆さんが少しでも長く,楽しい食事ができるようにお手伝いさせていただきます.何かあったらお声掛けください.

おいしいもの食べて,楽しく過ごしましょう.

ではまた!

NST便り-第29報-

ラジカセ

昔,大学の医局にいた若い頃,新しい教授が赴任された.

世界レベルの巧みな手術手技を持った先生である.

手術室に巨大な「ラジカセ」を持ってきて,度肝を抜き,「これがないとリラックスできまへんからな」と関西弁が新鮮だった.

カセットテープで「ロッド ステュワート」が がぁーん と来て,さらに度肝を抜かれた.

誰も味方のいない一匹狼で乗り込んできて,自分のやり方を始めることになって,大いに緊張していたのだろう.

もちろんロッド ステュワートはしばらく続いた.

自分も術者になってリラックスのために音楽は必要だった.

ラジカセでCDや,400チャンネルの有線放送設備があった.

主に,はやりの歌謡曲を聴きながらやったが,知っている曲はつい謡ってしまうので,その後は有線のB40:すなわちモーツァルトにした.もちろん知っている部分はうたってしまうが,歌詞がないから,みな ラ ラ ラ ですむ.

家の近くにこじんまりとしたパン屋があった.とうさん一人で切り盛りしていた.一人なのに何十種類もパンがあって,きっと毎朝3時に起きてパンを焼いて,夕方また翌朝の仕込みをしていたのだろう.

いつも,モーツァルトがかかっていた.「こうしないとおいしいパンが出来ないんだ」と言っていた.25枚のCDがまとめて入るマルチ CD チェンジャーというやつだった.昨日は「あの曲」,今日は「この曲」と,当てるのも楽しみだった.

カナダにいた時,実験がうまくいかず,言葉も通じなくて孤立感は最大だった.隣の病理のラボは1日中ラジオがかかっていた.当時の古いIBMのPCでは音楽再生は夢の又夢だった.

しばらくして,手術室の看護師から手紙をもらった.「早く帰ってきて下さい.そしてまた,みぽりんをかけながら一緒に手術しましょう」とあったので,励まされて,大いに涙した.

いい音楽がかかっていると食欲も増すだろう.病室でもロッド ステュワートやモーツァルトが常に流れていると,皆の食餌摂取量がアップしそうだ.

全館同じ曲というわけにはいかないが,食事の時くらいはテレビなどに注意を奪われずに,耳から脳に気持ちよく流れる音楽があってもいい.

黒川泰任

 

NST便り-第28報-

皆さんはじめまして!今年の7月よりNSTに加入した看護師の松崎と申します

今年も残すところおよそ2か月となり,北海道の早い冬が訪れようとしています.そんな冬にも「脱水」が起こりうることを皆さんはご存じでしょうか?

脱水というと暑い夏のイメージが強いかもしれませんが,実は冬でも脱水を引き起こすリスクがあります.その1番の理由は,空気の乾燥が挙げられます.最近の住宅は気密性が高いうえ,エアコン・ストーブなどの暖房器具の使用によりさらに湿度が低下します.乾燥した環境では,皮膚や粘膜,あるいは呼気から自覚がないまま水分が失われる「不感蒸泄」が増えます.つまり冬場では日常の室内生活で知らないうちに,体から失われる水分量が増えている可能性が高いのです.

加えて冬は水分を失っている自覚が少ないため,夏場に比べて水分摂取量が減少傾向となります.「体感温度が低いと喉の渇きを感じにくい」,「体を冷やしたくない」などの理由で水分摂取を控えてしまいます.

このように、空気の乾燥による不感蒸泄の増加・水分摂取量の減少が同時に起こりうる冬は,日常的に脱水のリスクと隣り合わせであることに注意が必要です.

脱水の症状としては,皮膚の乾燥,口腔内乾燥,倦怠感,活気がなくなる,眩暈や立ち眩みなどがあります.

冬場の暖房の効いた部屋で長時間過ごすときの脱水予防としては,喉の渇きを感じる前にこまめな水分補給を心がけることが重要です.不感蒸泄では電解質はあまり失われないため,日常生活における脱水予防としては,温かい白湯などの体を温めつつ水分を補える飲料が良いと思います.また,室内の湿度を高く保つことも必要です.食餌には,ホウレン草や小松菜のような電解質・水分が豊富な緑黄色野菜や果物を摂るのもいいかもしれません.

そして冬はインフルエンザや感染性胃腸炎の流行時期でもあります。嘔吐や下痢,高熱で発汗したときには,水分と共にナトリウムやカリウムなどの電解質も失っているため,水を大量に飲むだけでは適切な水分補給ができません.水だけを大量に飲むと一旦は体液量が増えますが体液に含まれる電解質の濃度が下がり,体液濃度を一定に保とうとする体の仕組みで水分のみが排出されるため,脱水状態から回復できなくなってしまいます.水分と共に電解質を失っているときには、水だけを飲むのではなく,電解質を含む飲料(スポーツドリンクや経口補水液)で補水することが重要です.

感染症に目が向いてしまうご時世ですが,バランスの良い生活を心がけ,「冬の脱水」による体調不良にも気を付けていきましょう.

看護師 松崎美咲