NST便り-第39報-

ヒトの歯と食事内容の関係  -続編-

前回は,ヒトの歯の複数の種類について,すなわち,切歯,犬歯,小臼歯,大臼歯についてお話ししました.

今回の続編は,臼歯のうち,一番奥で「親知らず」や「智歯」とも呼ばれる第三大臼歯に注目してみました.

数と機能は前回も記しましたが,以下の通りです.

  • 第三大臼歯:1対で上下の合計4;穀物や豆類をすり潰す.

多数の論文報告にもありますように,第三大臼歯が口腔内で確認出来るは,時代と共に減少してきています.

  • 第三大臼歯の数の変化
(%) 縄文時代 古墳時代 鎌倉時代 現代
4本全てある人の割合 80 60 50 30
1~3本ある人の割合 10 20 25 35
ない人の割合 10 20 25 35

 

古墳時代は,前時代である弥生時代から始まった稲作が確立され,食生活状況が良くなったと言われています.齲歯(虫歯)もすでに弥生時代人で発生していると報告されています.

またこれ以降,調理技術の進歩により,軟らかい物を食べることが可能になったため,穀物や豆類をすり潰す臼歯の機能が徐々に不要になったことも一因と考えられています.

このように,不要な物が退化することを廃用萎縮と表現しますが,これは歯だけの現象ではありません.

NST回診時,必要量の経口摂取が困難な患者様にお会いすることがあります.困難な理由は様々ですが,腸管が働いているうちは,なるべく腸を使い,消化,吸収,免疫等の様々な働きを持つ腸の機能をできるだけ維持していくことが望ましいと考えます.

 

 

 

 

‘‘If the gut works, use it(腸が使えるなら,腸を使え)”という臨床的格言もあります.

引用文献

  • 山田博之ら.日本人第3大臼歯欠如頻度の時代変化.Anthropol Sci (JPN) 112: 75–84, 2004
  • Livingston A,et al. If the gut works use it. Nurs Manage 31: 39-42, 2000
  • 金澤英作ら.江戸時代人の第三大臼歯の欠如率.Anthropol Sci (JPN) 126: 5–13, 2018

 

管理栄養士 町田 郁子