NST便り-第22報-

アルコール飲料のカロリー

 

「酒を飲むと ふ と る」とよく言われますが,栄養学的にはどうでしょうか?

アルコール飲料のカロリーは実は難しいのですが,以下考えてみました.

まず,糖による甘みが加わったアルコール飲料は,当然アルコールのみよりも摂取カロリーが高くなりますが,それぞれの量は様々なので,純粋にアルコール飲料のエタノールのカロリーを考えます.

ヒントは

①エタノールのカロリーは7 kcal/g

②エタノールの比重は0.789

③ラベルの記載濃度は体積%です.

④%濃度の他に「プルーフ」とも記載されています.

1

43%のウイスキーを200 ml のむと

→200 ml x 0.43 x 0.789 x 7 kcal = 475 kcal

2

飲んだ量(ml) x プルーフ x 0.027が摂取カロリー

→200 x 86 x 0.027 = 475 kcal

いずれにしても 結構なカロリーになりますね.

一方で,

「エタノールはempty calorie」という考えもあります.

①7 kcal/gは物理的燃焼カロリー

②エタノールのみ摂取すると低血糖になる.

③エタノールのみ摂取しても体重が増えない.

これも事実でアルコール飲料だけ摂るいわゆる「酒飲み」は皆やせています.

飲酒で太るヒトは,そのカロリーの何倍もおつまみや食事を摂っているためと考えられています.

化学物質としてのエタノールのカロリーの高さは明らかですが,実は体内で有効なカロリーにならない理由については完全には解明されていません.

経口摂取減少=飢餓時には,たくわえられていた脂肪酸が肝臓で

脂肪酸→acyl CoAacetyl CoA→酢酸

となって(肝TCAでは酸化されず),末梢,主に筋肉に運ばれ,エネルギー源になります.

一方摂取された酢酸は肝臓でエネルギーを使ってacetyl CoAに変換され,脂肪酸の分解促進,合成酵素抑制に働き,また筋肉でミオグロビンやGLUT4の発現を亢進して,脂肪減少と代謝促進に働き,体重減少に働きます.

エタノールは肝臓で

エタノール→アセトアルデヒド→酢酸  と

分解されるので,acetyl CoAと酢酸は,飢餓と摂取で行き来して脂肪酸の代謝を制御していることになります.

糖質少なめのおつまみと控えめの酒量がベストのようです.

黒川泰任

参考:

1)アルコール度数

ある飲料に対するエタノールの体積濃度(体積百分率:%

2)プルーフ

主に2つある.

①US プルーフ(アメリカ合衆国で用いられる.60°Fで測定)

これは上記度数の2倍の数字

②UK プルーフ

アルコール濃度を測定できなかった時代に酒に課税するために,着火する濃度を課税され始める濃度=100プルーフとして,燃え上がる酒を極上=オーバープルーフ,着火しない粗末な酒をアンダープルーフといった(1980年まで).つまり火が着けばアルコールと証明(=プルーフ)されて課税された.

のちに測定すると,100プルーフは,51°F(10.56℃)において容量率57.1%のエタノール含有液とわかった.