NST便り-第19報-

食欲の改善が期待できる薬剤

本格的な寒さが身に染み,春が待ち遠しい季節になりました.薬剤師の中陳貴史です.食欲を改善する薬剤としてエビデンスがあるものは多くなく,副作用や保険適用の観点から注意が必要ではありますが,期待できる薬剤についてあげていきたいと思います

①漢方薬(六君子湯;りっくんしとう,補中益気湯;ほちゅうえっきとう,十全大補湯;ジュウゼンタイホトウ,人参養栄湯;にんじんようえいとうなど)

グレリンとよばれる胃から産生されるホルモンの分泌亢進により食欲増進が促されると考えられています.

 

➁レボドパ製剤 

パーキンソン病治療薬であるレボドパ製剤は,活動性が低下し食事が進まない時に少し元気になって食が進む効果があると考えられています.

また嚥下反射や咳嗽反射の改善も期待できます.

 

③シプロへプタジン

抗アレルギー薬であるシプロヘプタジンは,ヒスタミンやセロトニンの受容体を遮断することで,摂食を中止する信号の遮断を起こすと考えられています.

しかし傾眠を招きやすいので注意が必要です.

 

④コリンエステラーゼ阻害薬

アルツハイマー型認知症治療薬であるコリンエステラーゼ阻害薬は,無気力・無関心などの陰性症状を改善する効果があり,陰性症状の1つである食欲低下も改善すると考えられています.

食べられないという症状の改善には,嗜好にあわせた食事の提供や,食事環境をかえるなど様々な対応があると思います。劇的な改善は期待できないかもしれませんが,薬剤によっても食欲を改善できる可能性もあります。

薬剤の視点からもアプローチしていければと思います.

薬剤師 中陳貴史