NST便り-第16報-

アルコール

前回の投稿からちょうど1年が経過し,再び宴会シーズンが到来しました.今年は,コロナ禍のために,皆様は様々な新しい様式の宴会を楽しまれることでしょう.

1.初めに,飲んだアルコールは体内でどうなるかを話します.

①飲んだアルコールのうち80%は,NAD (nicotinamide adenine dinucleotide)という物質を使い,アルコールデヒドロゲナーゼという酵素によってアセトアルデヒドという物質になります.さらに,前述したNADを使い,アルデヒドデヒドロゲナーゼという酵素によって酢酸が生成されます.代謝は更に進み,酢酸からアセチルCoAとなりクエン酸回路へと進んで行き,エネルギー(ATP)や脂肪酸の合成に入ります.

NADは脂肪から生成されます.しかしアルコールを飲む人は,このNADを脂肪ではなくアルコールから生成するため,脂肪は使われず蓄えられ,アルコール性脂肪肝の原因になります.

②10%は,MEOS (microsomal ethanol oxidizing system)で代謝されます.MEOSとはP450という薬物の代謝系の1つです.アルコールを常に飲んでいる人はMEOSが誘導されているため,このような人がアルコールを飲むのをやめて薬を飲むと,薬がMEOSで代謝されてしまいます.これが,アルコールを飲む人は薬が効かないという1例です.

逆に,アルコールを常に飲んでいる人は薬が効きすぎるという例もあります.焼酎2~3杯飲んでトリアゾラム(ハルシオン®)を服薬した場合は,前述のP450がアルコールの代謝に一生懸命でトリアゾラムを代謝しなかったために,トリアゾラムの血中濃度はいつまでも下がらなかったということです.

③残りの10%は呼気で排出されます.

2.次に,アルコールが太る原因になるという話です.

アルコールは栄養素ではありません.しかし1 g当たり7 kcalのエネルギーがあります.1日のエネルギーの約半分をアルコールから摂取するような大量飲酒の人は食欲が低下することもあるようですが,普通に飲んでいれば,飲んだアルコールの分だけ体重が増えます.

また,低血糖や,ビタミンB1,ビタミンB6,カルシウム等,体の維持に必要な栄養素の損失をもたらします.アルコールはご飯の代わりにはなりません.

3.最後に

以上を頭の片隅に置かれたうえで,ほどほどの量で楽しんでください.

 

管理栄養士  町田郁子